コスメの有効成分は本当に肌に吸収されるの?
シミの改善や美白。シワやたるみの解消に、ニキビの改善など多くの化粧水や美容液といったコスメでは様々な効能がうたわれ、そのための有効成分が配合されています。
でも、いくら成分が肌のトラブル解消に有効だからといって、それが本当に問題部分に浸透していかなければ、肌のトラブル解消には繋がりません。
コスメに含まれた有効成分が、本当に肌に浸透・吸収されるのかどうかを解説します。
有効成分は、条件を満たせば浸透する
まず、有効成分と呼ばれるものが肌に浸透するかどうかの結論から言えば、答えは「しっかりと条件を満たせば浸透する」というものになります。
その条件は、大きく分けて2つ。一つが浸透させたい物質の大きさが小さい事と、もう一つが脂や水に反発しないという性質を持っているという事です。
分子量や成分物質の大きさが小さい事
浸透させる条件の1つ目である物質の大きさが小さい事は、分子量という目安で考える事が出来ます。
分子量とは、物質そのもの(分子)の大きさを示すもので、例えば水なら18という大きさになります。
理科の話で言えば、分子量は物質を構成する原子の大きさを合計したもので、水であればH2Oなので、H(水素)が2つ分と、O(酸素)が1つ分の大きさを足したもの。Hは分子量が1、Oは分子量が16なので、この合計で18という形になっています。
では、どのくらいの分子量であれば肌に浸透が可能かというと、これには段階が2つあって、表皮層(肌の浅い部分)に浸透させるためには大体3000以下、真皮層(肌の細胞を作っている深い場所)に浸透させるためには大体500以下程度が目安の大きさだといわれています。
そして、実際の有効成分がそれぞれどの程度の大きさかについてですが、よく利用される美容成分の大体の分子量は以下のようになっています。
・ヒアルロン酸:100万
・コラーゲン:10万
・超低分子コラーゲン:500~1000
・ビタミンA:290
・ビタミンC:200
・ビタミンC誘導体:400~1100
・ビタミンE:430
・アミノ酸:80~2000
・セラミド:700
・EGF:6000
以上から、分子量の大きさだけで考えれば例えばヒアルロン酸やコラーゲンは肌に全く吸収されず、セラミドや超低分子コラーゲンは表皮層あたりまで浸透、ビタミンC誘導体やアミノ酸などは真皮層まで浸透させる事が可能だという事が出来ます。
ただし、分子量の大きさだけではなく長さも考慮が必要
しかし、物質の大きさは分子量によってのみ決まるわけではありません。
というのも、分子量はあくまでもその物質の分子単体での大きさであって、通常物質は沢山の分子が結合して作られています。
そのため、例えば分子量が500の物質であってもそれが球のように200個程集まって構成される性質であれば、分子量が3000でも5個程度が棒状に集まって構成されるものより、浸透しにくくなってしまうのです。
この点を考えた時に重要となるのが、物質がコスメに配合されている時の長さです。
角質層の細胞間は、70~700nm(1ナノメートル=100万分の1ミリメートル)程度の大きさですので、これ以下であれば、通過する事が出来るとされています。
そのため、例えば分子量という点では角質層に浸透が難しいレベルのEGFも、形状が浸透に適したものとなっていれば、浸透する事が可能となります。
物質の長さについては同じ成分でも配合する企業の技術などにより異なる場合があるため、一概に「この成分なら浸透する」とは言えないのですが、一つの目安として考えてみると良いでしょう。
脂溶性と水溶性の性質を持つ事
二つ目の条件である脂や水に反発しないというものですが、これは肌の性質によるものです。
というのも、肌の表面は皮脂などの脂によってコーティングされたような状態となっていて、ここに例えば水をたらしても、脂が水をはじいてしまうため表皮に浸透する事が出来ません。そのため、肌に浸透させるためにはまず脂に反発せず、混ざりあう事ができる「脂溶性」の性質を持っている事が重要となります。
しかし、肌が表面の皮脂膜を超えたとしても、今度は肌の細胞の隙間に存在する細胞間脂質という部分に阻まれる事になります。
細胞間脂質とは、セラミドを主成分とした物質で、脂と水が重なり合ったような状態(ラメラ構造)になっています。
これがどう影響するかというと、脂に反発しない性質の物質であっても、今度は逆に水の層に反発してしまい、肌に浸透する事が出来なくなってしまうのです。
これを回避するために、今度は水に溶ける事ができる「水溶性」という性質を持つ事が必要となります。
しかし、通常ほとんどの物質は自然界において脂溶性の性質か水溶性の性質のどちらかしか持っていません。
例えば上記で挙げた美容成分でいえば、ビタミンAやEは脂溶性。ビタミンCは水溶性となり、このままでは肌に浸透させる事が難しいという事になってしまいます。
そこで研究の末登場したのが、例えばビタミンCに脂溶性の性質を付加したビタミンC誘導体です。誘導体とは物質の性質を大幅に変えない程度に改変したものですが、ビタミンC誘導体の場合は脂溶性の物質をビタミンCに結合する事で、ビタミンCとしての機能はそのままに、水溶性と脂溶性の両方の性質をもつ物質に改変したものになります。
ビタミンC誘導体は脂溶性の物質をくっつけているためビタミンCよりも分子量は増加しますが、その分脂溶性の性質が追加されているため、肌に浸透させる事が出来るようになっているのです。
肌に浸透する美容成分を選ぶために
以上が、成分が肌に浸透するための2つの条件です。
成分の分子量や長さ、性質を消費者が知る事は中々難しいため、正確に成分が肌に浸透できるものかどうかを判断する事は難しいですが、例えばこういった条件がちゃんと考えられて作られているコスメかどうかを判断する基準としては
・「ナノ化」や「低分子化」など、サイズや分子量を小さくしている事が記載されている
・「誘導体」や「リポソーム」など、肌に浸透させやすくする性質の拘りが記載されている
というような部分が、一つの参考になるかもしれません。
肌のトラブルを解消するために、ちゃんと浸透させる事ができる美容成分はとても有効に働きます。
浸透させる2つの条件を一つの参考にして、より良いコスメを探してみて下さい!
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