幼児にハチミツは危険!乳児ボツリヌス症とは?
赤ちゃんにハチミツを与えてはいけないという事は、恐らく子を持つ母親なら誰しもが知っている注意事項の一つ。
その理由はボツリヌストキシン(ボツリヌス毒素)とよばれる毒によって乳児ボツリヌス症(ボツリヌス中毒)というものにかかる危険性があるからです。
ボツリヌス中毒はとても強力な症状
ボツリヌス中毒とは、ボツリヌス毒素によって体の末端神経がマヒしてしまい、軽い症状では吐き気や手足のしびれ。症状が重いと呼吸困難や全身麻痺といった状態になり、最悪死に至る事もある症状。
ボツリヌス毒素は毒の強さとしては最も強い毒の一種とされており、現在は禁止されていますが生物兵器としての開発なども行われていたものです。
近年ではそこまで多くの件数が発生するわけではありませんが、一家全員がボツリヌス中毒によって死亡してしまうなどの事件が発生していたりと、その危険性は十分に注意する必要があります。
そもそもボツリヌスとは自然に多く存在する菌の一種
実は、ボツリヌスは菌の一種で、土など身近な自然の中にも「芽胞(がほう)」とよばれる状態で多く存在しています。
ボツリヌス菌は芽胞の状態であれば特に毒性が無く、誤って口にしてしまったとしても特に問題になる事はないので、例えば農作業などをやっていて土を食べてしまい、その土にボツリヌス菌がついていたからといって、ボツリヌス中毒にかかるような事はまずありません。
ではどういう時にボツリヌスが危険になるかというと、それは空気が無い中にボツリヌス菌が置かれた時。
ボツリヌス菌は嫌気性という空気(酸素)が苦手な菌であるため、空気に触れるような環境ではおとなしいのですが、空気がない密封された環境の中に入り、さらにそこが十分な水や栄養素を満たす環境であると、増殖を始めます。
この増殖する際にボツリヌス毒素も多く作られていくため、空気が無い密封された状態……例えば缶詰やソーセージなどの加工肉などの中で増殖してしまっているものを食べると危険というものであり、前述のように単にボツリヌス菌を摂取してしまった場合については、通常は体内にて菌が破壊されるため、危険性は殆どありません。
また、ボツリヌス毒素は熱に弱いため食品を十分に加熱すれば、一旦ボツリヌス毒素が増えてしまった食材であっても問題なく食べる事が出来ます。
ただし、乳児にとっては通常状態のボツリヌス菌でも危険!!
しかし、これが乳幼児。特に生後6か月以内の赤ちゃんの場合、少し状況が異なります。
というのも、乳幼児はまだ体内に入ってくる菌に対して十分な抵抗力が無く、通常であれば問題が無いはずの「芽胞」状態のボツリヌス菌でも、体内で十分に殺菌する事が出来ません。そして、体内は十分な水分と栄養素があり、かつ空気が無い状態ですので、ボツリヌス菌が増殖を初めてしまうのです。
また、ボツリヌス毒素が熱に弱いと先ほど紹介しましたが、ボツリヌス菌自体は熱に強く、ある程度の過熱では殺菌する事が出来ないため、乳幼児の場合は食品を加熱するどうこうではなく、ボツリヌス菌そのものを排除した食事にする必要があります。
ハチミツはボツリヌス菌が入っている可能性が高い
そこで問題になりやすい食材の一つがハチミツ。
ハチミツは栄養素も高く、昔は離乳食などにも用いられていましたが、その作られ方はハチが自然の中を飛び回って集めた蜜。ボツリヌス菌は自然界の色々な場所で存在していますので、ハチが集めてきたハチミツの中に含まれてしまう可能性はかなり高く、乳児ボツリヌス症を引き起こす可能性が高い食材でもあるのです。
そのため、1987年には1歳未満の乳幼児にハチミツを与えないようにという勧告がでるなど、乳幼児にとって危険性が高い食品の一つとして認識されています。
ボツリヌス中毒は早期に気付いて対処しないと、危険性がかなり高い症状の一つです。
時折「多少は食べさせた方が強くなる」などの考えを持つ方もいるようですが、抗体ができるようなものでもありませんので、乳幼児に対してハチミツを食べさせたり、土などを触った手で作ったような料理を食べさせる事は絶対にやめましょう。
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